三段リーグの厳しい現実

 

 棋楽は、これまでにプロ棋士となった方々が、厳しい新・三段リーグを、一体どの程度の在籍期間で突破されてきたのか、三日間にわたり、調べてきました。

 実のところ、当初、竜王・名人を筆頭に(順位戦)A級棋士となったプロ棋士の方々は、きっと、簡単に三段リーグを突破していると思い込んでおりました。

 藤井聡太七段が、第59回三段リーグを突破し、晴れて四段のプロ棋士となったとき、やはり、一流の棋士は三段リーグの在籍期間が短いと思ったからです。

 ところが、調べているうちに、一流棋士となるための条件は、どうも三段リーグの在籍期間ではなく、年齢ではないかと感じるようになりました。

 

結 論

 

 

・新・三段リーグは(一部例外を除き)10代で突破しないと、A級棋士になることが難しい。

・更に、タイトルを取ることも難しい。

 

 そのため、20代で、プロ棋士となり、

 A級棋士、タイトル取得を目指す場合は、相当の覚悟が必要である。

 

 

 

 では、調査の結果を、見てみましょう。(記憶を頼りにした部分もあるため、一部、間違いがあるかもしれません。御容赦下さい。)

 

新・三段リーグを突破した棋士

 第1回~第60回までの新・三段リーグからプロ棋士になった方は、(フリークラス編入規定およびプロ編入試験も含めて、)127名です。

 棋士番号で言いますと、184番から310番までの方、127名が、新・三段リーグを突破されたプロ棋士です。

 

うち、10代で突破した棋士

 新・三段リーグを突破した127名のプロ棋士のうち、(リーグ参加時点)10代で三段リーグを突破された棋士は、45名です。(資料-1参照)

 率にしますと、およそ35%に相当します。(45名/127名 = 約35%)

 

A級八段となった棋士

 新・三段リーグを突破した127名のプロ棋士のうち、(竜王・名人を含む)A級八段まで到達した棋士は、19名です。(該当者は、資料-1および資料-2において、棋士番号横に★マークを付けた棋士です。)

 

 A級八段まで到達した棋士19名のうち、実に16名が10代で三段リーグを突破しているのです。

 率にしますと、およそ80%を超える率に相当します。(16名/ 19名 = 約84%)

 

 なお、例外の3名、藤井猛、鈴木大介、木村一基の各九段は、それぞれ20代で三段リーグを突破しています。(資料-2参照)

 

タイトルを取得した棋士

 新・三段リーグを突破した127名のプロ棋士のうち、タイトルを取得した棋士は、15名です。(該当者は、資料-1および資料-2において、黄色でマーカーを付けた棋士です。)

 

 タイトルを取得した棋士、15名のうち、実に14名が10代で三段リーグを突破しているのです。

 率にしますと、およそ90%を超える率に相当します。(14名/ 15名 = 約93%)

 

 なお、例外の1名、藤井猛九段は、20代で三段リーグを突破しています。(資料-2において、黄色でマーカーを付けた棋士です。)

 

補 足

 10代で三段リーグを突破した棋士(資料-1参照)のなかには、今後、A級棋士やタイトルの取得が期待される若手棋士が、数多くいます。

 そのため、10代で三段リーグを突破した棋士に占める割合は、まだ高くなると予想されます。

 

 しかし、ブルーカラーとして生きてきた棋楽としては、今後、願わくば20代で棋士となった方々の活躍を期待しています。

 特に、木村一基九段は、新・三段リーグ13期在籍し、23歳で四段になりましたが、その後A級八段まで到達し、いまもB級1組でA級復帰を目指しています。

 また、これまでに、タイトルは獲得していませんが、竜王戦をはじめ6度にわたりタイトル戦に登場し、活躍されています。

 若手の棋士の方々は、木村先生を模範として、精進して欲しいと願っています。

 

 以下、参考資料です。

 

資料-1:10代で、三段リーグを突破した棋士

 

注1)氏名左の番号は、棋士番号
注2)氏名右括弧書き数字は、リーグ参加時点の年齢
注3)氏名右の丸数字は、リーグ在籍回数
注4)氏名右のクラスは、順位戦最高到達クラス
注5)氏名黄色のマーカーは、タイトル取得経験者

 

第001回、1987(S62)年度前期
・184 中川 大輔(19)① B級1組
★185 先崎  学(17)① A級

第003回、1988(S63)年度前期
189 屋敷 伸之(16)① A級

第006回、1989(H01)年度後期
194 丸山 忠久(19)② 名人・A級
195 郷田 真隆(19)④ A級

第009回、1991(H03)年度前期
201 深浦 康市(19)⑤ A級

第010回、1991(H03)年度後期
・202 真田 圭一(19)③ C級1組

第011回、1992(H04)年度前期
204 三浦 弘行(18)③ A級

第012回、1992(H04)年度後期
207 久保 利明(17)② A級

第013回、1993(H05)年度前期
★208 行方 尚史(19)③ A級

第014回、1993(H05)年度後期
・211 北浜 健介(18)② B級1組

第017回、1995(H07)年度前期
・217 田村 康介(19)⑥ B級2組

第022回、1997(H09)年度後期
・227 山崎 隆之(17)⑤ B級1組

第024回、1998(H10)年度後期
・231 松尾  歩(19)① B級1組

第025回、1999(H11)年度前期
★233 阿久津主税(17)② A級

第026回、1999(H11)年度後期
235 渡辺  明(15)② 竜王・A級

第028回、2000(H12)年度後期
★239 橋本 崇載(18)⑤ A級

第033回、2003(H15)年度前期
・249 村山 慈明(19)④ B級1組

第034回、2003(H15)年度後期
・252 中村 亮介(18)③ C級2組

第036回、2004(H16)年度後期
255 広瀬 章人(18)⑤ A級
・256 長岡 裕也(19)④ C級2組

第037回、2005(H17)年度前期
・257 高崎 一生(18)⑤ C級1組

第038回、2005(H17)年度後期
260 糸谷 哲郎(17)③ 竜王・A級
261 中村 太地(17)④ B級2組

第039回、2006(H18)年度前期
263 佐藤 天彦(18)⑧ 名人・A級

第040回、2006(H18)年度後期
264 豊島 将之(16)⑤ A級

第042回、2007(H19)年度後期
★269 稲葉  陽(19)⑥ A級

第044回、2008(H20)年度後期
・274 澤田 真吾(17)② B級2組
・275 大石 直嗣(19)⑤ B級2組

第045回、2009(H21)年度前期
・276 永瀬 拓也(16)③ B級2組

第046回、2009(H21)年度後期
278 菅井 竜也(17)④ B級1組

第047回、2010(H22)年度前期
・280 佐々木勇気(16)④ C級1組

第048回、2010(H22)年度後期
・283 阿部 光瑠(16)④ C級2組

第049回、2011(H23)年度前期
284 高見 泰地(17)③ C級2組

第050回、2011(H23)年度後期
・286 斎藤慎太郎(18)⑧ B級1組
・287 八代  弥(17)④ C級2組

第052回、2012(H24)年度後期
・291 千田 翔太(18)⑥ B級2組

第055回、2014(H26)年度前期
・297 増田 康宏(16)⑤ C級1組

第056回、2014(H26)年度後期
・300 青嶋 未来(19)⑤ C級1組
・301 梶浦 宏孝(19)⑤ C級2組

第057回、2015(H27)年度前期
・303 近藤 誠也(18)④ C級1組

第059回、2016(H28)年度前期
・307 藤井 聡太(13)① C級1組

 

資料-2:例外のケース

第008回、1990(H02)年度後期
198 藤井  猛(20)② 竜王・A級

第015回、1994(H06)年度前期
★213 鈴木 大介(20)⑤ A級

第020回、1996(H08)年度後期
★222 木村 一基(23)⑬ A級

 

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