特集 第71期王将戦 渡辺vs藤井

はじめに

 令和4年、新年早々に、第71期王将戦が開幕する。

 挑戦者は、現在飛ぶ鳥を落とす勢いの藤井聡太竜王で、迎えるは、タイトル保持者の渡辺明名人。

 将棋界では、2017年度、8つのタイトルを8人の棋士で分け合うという戦国時代を迎えていた。

 しかし、現在、タイトル保持者は3人に淘汰され、今回は、4冠と3冠の頂上決戦となっている。

 渡辺防衛なら藤井・渡辺の2強時代、藤井奪取なら藤井5冠・渡辺2冠で藤井1強時代の到来だ。

 そこで、今回、渡辺・藤井を多角的に比較しながら、王将戦の展開を予想する。

 

浮世棋楽 王将戦を占う

対局者プロフ 

 

昇段履歴

 

年度別成績

 

タイトル獲得

 

戦型・先後別成績

第71期王将戦:渡辺vs藤井⑤戦型と成績

 

 渡辺王将、藤井竜王は、いずれも居飛車党なので、相居飛車の戦型に限定して、通算の戦型・先後別勝率を調べてみた。

 仮に勝率の高い戦法を得意戦法とするならば、渡辺・藤井の得意戦法は、以下のとおりである。

<渡辺王将の得意戦法>

   先手番の場合    後手番の場合

 1.0.810 角換わり  0.657 矢  倉
 2.0.792 相掛かり  0.617 角換わり
 3.0.700 横歩取り  0.583 相掛かり

<藤井竜王の得意戦法>

 1.0.952 矢  倉  0.872 矢  倉
 2.0.933 相掛かり  0.767 角換わり
 3.0.886 角換わり  0.750 相掛かり

 

対戦履歴と戦型

※主催者様の中継サイトに棋譜が掲載されている場合は、下記日程上に外部リンクを貼付しています。どうぞ、お愉しみください。

0130:19/02/16 ●渡辺棋王-藤井七段○ 雁木 朝日杯

020620/06/08 ○藤井七段-渡辺棋聖● 矢倉 棋聖戦➀

021220/06/28 ●渡辺棋聖-藤井七段○ 矢倉 棋聖戦②

021720/07/09 ●藤井七段-渡辺棋聖○ 角換 棋聖戦③

021920/07/16 ●渡辺棋聖-藤井七段○ 矢倉 棋聖戦④

0249:21/02/11 ●渡辺名人-藤井二冠○ 相掛 朝日杯

026221/06/06 ●渡辺名人-藤井棋聖○ 相掛 棋聖戦➀

026421/06/18 ○藤井棋聖-渡辺名人● 相掛 棋聖戦②

026821/07/03 ●渡辺名人-藤井棋聖○ 矢倉 棋聖戦③

028821/09/14 ●藤井棋聖-渡辺名人○ 角換 銀河戦

 

<渡辺先手で:渡辺0勝 藤井6勝>

0130:19/02/16 ●渡辺棋王-藤井七段○ 雁木 朝日杯
0212:20/06/28 ●渡辺棋聖-藤井七段○ 矢倉 棋聖戦②
0219:20/07/16 ●渡辺棋聖-藤井七段○ 矢倉 棋聖戦④
0249:21/02/11 ●渡辺名人-藤井二冠○ 相掛 朝日杯
0262:21/06/06 ●渡辺名人-藤井棋聖○ 相掛 棋聖戦➀
0268:21/07/03 ●渡辺名人-藤井棋聖○ 矢倉 棋聖戦③

<渡辺後手で:渡辺2勝 藤井2勝>

0206:20/06/08 ○藤井七段-渡辺棋聖● 矢倉 棋聖戦➀
0217:20/07/09 ●藤井七段-渡辺棋聖○ 角換 棋聖戦③
0264:21/06/18 ○藤井棋聖-渡辺名人● 相掛 棋聖戦②
0288:21/09/14 ●藤井棋聖-渡辺名人○ 角換 銀河戦

 

戦型予想

<渡辺、先手番の場合>

結 論:角換わり 又は、相掛かり

理由① 矢倉は、指せない。

 相矢倉は、相撲ならば、がっぷりと四つに組んだ相撲で、双方の実力を最も発揮できる戦法だ。

 渡辺は、2度の棋聖戦五番勝負で、7局中4局(先手番3局、後手番1局)、矢倉を採用した。

 おそらく、この時点では藤井の実力を、名人として、正直まだまだと思っていたに違いない。

 

 しかし、矢倉戦法で先手番3敗、後手番1敗の計4連敗と、藤井の実力を身をもって体感した。

 2度のタイトル戦(棋聖戦5番勝負)で敗退した渡辺にとっては、もう後がない状態なのだ。

 よって、今回の王将戦では、余程勝ち星が先行しない限り、矢倉を採用することはないだろう。

 

理由② 角換わり・相掛かりの通算勝率が高い。

 渡辺の最も勝率の高い戦型は、先手角換わり(0.810)だ。

 これまでの対戦履歴では、先手角換わりは封印しているが、後手角換わりでは2戦2勝なのだ。

 そのため、先手番の角換わりを採用する確率は、相当に高いと思われる。

 

 また、角換わりに次いで勝率の高い戦型が、相掛かり(0.792)だ。

 相掛かりは、先手番2敗、後手番1敗の計3連敗だが、朝日杯では、藤井玉を追い詰めている。

 また、藤井後手相掛かり(0.750)は、藤井が3連敗した戦型でもあるのだ。 

 

<渡辺、後手番の場合>

結 論:角換わり 又は、横歩取り

理由① 後手角換わりで、渡辺が2戦2勝している。

 前述のとおり、渡辺の最も得意としている戦型は角換わりで、後手番ながら2戦2勝している。

 

理由② 藤井先手横歩取り(0.611)の勝率が低い。

 局数は、少ないが、藤井先手横歩取りの勝率が低い。

 渡辺の後手横歩取り(0.567)の勝率が、決して高いとは言えない。

 しかし、藤井先手と渡辺後手の勝率差を考えれば、チャンスは十二分にあるだろう。

 

 最後に、勝敗予想として藤井聡太竜王の4勝1敗で、最年少5冠達成と予想する。(棋楽)

 

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