0001:加藤一二三九段 ①

 

○主 催:読売新聞社
○棋 戦:第30期竜王戦
○備 考:6組ランキング戦

○対局日:平成28(2016)年12月24日
○対局場:東京・将棋会館
○持時間:各5時間

 先手▲:加 藤 一二三 九段(77)
 後手△:藤 井 聡 太 四段(14)

注①:( )内は、対局時点の年齢。
注②:「藤井聡太全局集 平成28・29年度版
    日本将棋連盟発行」より、棋譜参照

 

加藤一二三 九段 のこと

 

○棋士番号:064
○生年月日:1940年01月01日
○出身地 :福岡県嘉麻市
○クラス :引退(2017年06月20日)

 

基本図:相矢倉

 

 

 基本図は、先手加藤が得意とする相矢倉戦への注文に、後手藤井が追随した局面で、矢倉24手組みと呼ばれる駒組みである。

 

 その昔、故加藤治郎名誉九段は、NHK杯トーナメント戦で、次のように解説していた。もちろん、聞き手は、故永井英明である。

 加藤:(基本図を見ながら)相矢倉の将棋は、ここから指し始めても良いくらい、基本中の基本と言える局面です。

 永井:確か、矢倉24手組みとか言われている手順でしたでしょうか。アマチュアにとって、矢倉戦というのは本当に難しい将棋ですね。

 加藤:まぁ、アマの方なら、ここまでの手順を正確にさせればアマ初段、いや、アマ二段位の実力があるかもしれませんね。

 まぁ、ざっと、こんな感じだったか・・・。

 

 基本図に目を戻そう。次に、先手は、▲1六歩、▲3七桂、▲3七銀、▲6七金右等の指し手が考えられる。

 故米長邦雄永世棋聖は、かつて、「矢倉は、純文学である。」と言っている。プロの相矢倉戦は、ここから実に緻密かつ複雑、濃厚で酷のある手順が、展開していくのである。

 

第01図:次の一手は?

 

 

 

 第01図は、基本図から先手加藤が▲6七金右で「金矢倉」を完成させ、後手藤井が△6四角と先手加藤の飛車の小鬢を狙い、後手玉頭への攻めを牽制したところである。

 ここで、先手加藤が指した次の一手を、次の候補手から、お考えいただきたい。

①▲1八飛
②▲4六角
③▲3七桂
④▲3七銀

 

第02図:正解の一手は?

 

 

【正解】

 先手加藤が指した次の一手は、▲3七銀。

 

【雑感】

①▲1八飛

 先後、1筋を突き合っていない局面では、飛の働きが悪く、単に飛取りを躱した甘い手に見える。

②▲4六角

 先後双方の角が動きづらく、その結果、千日手模様となり、先手の得を活かせないかもしれない。

 何故、先後双方の角(△6四角と▲4六角)が動きづらくなるのか、理由は2つある。

 第一に、角交換を仕掛けても、角交換を回避しても、手損になる。
 第二に、角交換を回避すると、角の好位置を放棄することになる。

③▲3七桂

 先後1筋の歩を突き合う、若しくは先手が1筋の歩を突き越したうえで、▲1七香から▲1八飛と、「雀刺し」を狙う。

 また、▲3八飛、▲5七銀、▲4六銀で、1・3筋から、飛・角・銀・桂・香によるコンビネーションで、攻めを狙う。

 ▲4六歩、▲4七銀と手厚く構える手もあるが、現代将棋においては、ややスピード感に欠ける意味合いがある。

④▲3七銀

 ▲4六銀、▲3七桂、▲3八飛から、前述同様、1・3筋から、飛・角・銀・桂・香によるコンビネーションで、攻めを狙う。

 先後1筋の歩を突き合えば、▲2五歩から、▲1七香、▲1八飛、▲2六銀、あるいは▲1七香を省略し、直ぐに▲1八飛、▲2六銀で、1筋突破を狙う指し方もある。

 また展開によっては、▲2五歩、▲2六銀からの棒銀や、▲3五歩、△同歩、▲同角のあと、▲3六銀から▲3七桂の好形を目指す指し方もある。

 

第03図:明日の一手は?

 

 第02図から、指し手が進み、

 

 

 第03図は先手加藤の▲1五歩に対して、後手藤井が△7三桂と指した局面である。

 さて、ここで、先手加藤が指した次の一手を、ノーヒントでお考えいただきたい。

 

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