第77期順位戦C級1組、昇級争い展望(その2)
目次
混沌とした昇級争い
昨日、1月8日に、東西の将棋会館に分かれて、順位戦C級1組9回戦の対局が行われました。
つい先日、昇級争い展望をお伝えしたところですが、やはり藤井聡太七段のことが気になりますので、あらためて状況をみてみましょう。
先日の展望では、近藤誠也五段、杉本昌隆七段、藤井聡太七段、それに船江恒平六段、この中から必ず2名昇級すると断言しました。
どうやら、その見通しに間違いはないようです。昇級候補者4人の対局結果は、以下のとおりでした。
●近藤誠也五段 西尾 明六段○
●近藤正和六段 杉本昌隆七段○
●富岡英作八段 藤井聡太七段○
○船江恒平六段 島 朗九段●
昇級レースの先頭にいた近藤五段が負けたため、4人の成績順位、立場が微妙に変化いたしました。
残りの対局相手と併せて、見てみましょう。
8勝0敗、⑦杉本昌隆七段
第09局、対⑭船江恒平六段(0勝2敗)
第10局、対⑨千葉幸生七段(0勝0敗)
8勝0敗、㉛藤井聡太七段
第09局、対⑥近藤誠也五段(2勝0敗)
第10局、対㉜都成竜馬五段(4勝0敗)
7勝1敗、⑥近藤誠也五段
第09局、対㉛藤井聡太七段(0勝2敗)
第10局、対㉝増田康宏六段(1勝2敗)
7勝1敗、⑭船江恒平六段
第09局、対⑦杉本昌隆七段(2勝0敗)
第10局、対⑬金井恒太六段(2勝1敗)
杉本七段と藤井七段の師弟が、昇級レースのトップに躍り出ました。
しかし、続く第10回戦(対局数としては第9局目)で、4人の直接対決があります。
そのため、昇級争いが、ますます混沌としてきたのです。
続く第10回戦の結果でどうなるのか。
2月5日(火)に行われる第10回戦の4人の組み合わせ、直接対決は次のとおりです。
先手:船江恒平六段 後手:杉本昌隆七段
先手:藤井聡太七段 後手:近藤誠也五段
勝敗の結果は、以下の4つのケースのうちの何れかとなります。
ケースA 杉本勝ち、藤井勝ち
ケースB 杉本勝ち、藤井負け
ケースC 杉本負け、藤井勝ち
ケースD 杉本負け、藤井負け
それでは、第10回戦の結果、4つのケースについて、順次、見ていきましょう。
<ケースA:杉本勝ち、藤井勝ちの場合>
9勝0敗、⑦杉本昌隆七段
第10局、対⑨千葉幸生七段(0勝0敗)
9勝0敗、㉛藤井聡太七段
第10局、対㉜都成竜馬五段(4勝0敗)
7勝2敗、⑥近藤誠也五段
第10局、対㉝増田康宏六段(1勝2敗)
7勝2敗、⑭船江恒平六段
第10局、対⑬金井恒太六段(2勝1敗)
【結論】
ケースAの場合は、最終局を待たずして、杉本七段と藤井七段の師弟ダブル昇級が確定です。
<ケースB:杉本勝ち、藤井負けの場合>
9勝0敗、⑦杉本昌隆七段
第10局、対⑨千葉幸生七段(0勝0敗)
8勝1敗、⑥近藤誠也五段
第10局、対㉝増田康宏六段(1勝2敗)
8勝1敗、㉛藤井聡太七段
第10局、対㉜都成竜馬五段(4勝0敗)
7勝2敗、⑭船江恒平六段
第10局、対⑬金井恒太六段(2勝1敗)
【結論】
ケースBの場合は、杉本七段の昇級が確定です。
最終局で、近藤五段は自力で、藤井七段は近藤五段のキャンセル待ちとなります。
船江六段の昇級の可能性はありません。
<ケースC:杉本負け、藤井勝ちの場合>
9勝0敗、㉛藤井聡太七段
第10局、対㉜都成竜馬五段(4勝0敗)
8勝1敗、⑦杉本昌隆七段
第10局、対⑨千葉幸生七段(0勝0敗)
8勝1敗、⑭船江恒平六段
第10局、対⑬金井恒太六段(2勝1敗)
7勝2敗、⑥近藤誠也五段
第10局、対㉝増田康宏六段(1勝2敗)
【結論】
ケースCの場合は、最終局まで昇級者は確定しません。
最終局で、藤井七段と杉本七段は自力で、船江六段は藤井七段か杉本七段、何れかのキャンセル待ちとなります。
近藤五段は杉本七段と船江六段の両名併せてのキャンセル待ちとなります。
<ケースD:杉本負け、藤井負けの場合>
8勝1敗、⑥近藤誠也五段
第10局、対㉝増田康宏六段(1勝2敗)
8勝1敗、⑦杉本昌隆七段
第10局、対⑨千葉幸生七段(0勝0敗)
8勝1敗、⑭船江恒平六段
第10局、対⑬金井恒太六段(2勝1敗)
8勝1敗、㉛藤井聡太七段
第10局、対㉜都成竜馬五段(4勝0敗)
【結論】
ケースDの場合も、最終局まで昇級者は確定しません。
最終局で、近藤五段と杉本七段は自力で、船江六段は近藤五段か杉本七段、何れかのキャンセル待ちとなります。
藤井七段は近藤五段と杉本七段と船江六段のうち、2名のキャンセル待ちが必要となります。
簡単なまとめ
第9回戦を終了した時点では、杉本七段が2局を残して、あと1勝で昇級という、かなり有利な状況になっています。
藤井七段は順位が悪いため、例え9勝1敗でも頭ハネで昇級できない可能性がありますので、一番も負けられません。
近藤五段は一歩後退して3番手となりましたが、藤井七段との一番を残しているため、まだ自力昇級が可能です。
船江六段に自力昇級の可能性はありませんが、とにかく残り2局を勝って9勝1敗でキャンセル待ちしかありません。
何れにせよ、第10回戦で昇級者が確定するのか、あるいは最終局まで縺れるのか、将棋ファンにとっても気になるところです。
次の4つのケースのうち、何れかも
現在、1敗以下の成績者は以下の4名です。
7勝0敗、⑥近藤誠也五段
第08局、対⑬西尾 明六段(1勝0敗)
第09局、対㉛藤井聡太七段(0勝2敗)
第10局、対㉝増田康宏六段(1勝2敗)
7勝0敗、⑦杉本昌隆七段
第08局、対㉘近藤正和六段(0勝0敗)
第09局、対⑭船江恒平六段(0勝2敗)
第10局、対⑨千葉幸生七段(0勝0敗)
7勝0敗、㉛藤井聡太七段
第08局、対㉟富岡英作八段(0勝0敗)
第09局、対⑥近藤誠也五段(2勝0敗)
第10局、対㉜都成竜馬五段(4勝0敗)
6勝1敗、⑭船江恒平六段
第08局、対㉑島 朗九段(1勝0敗)
第09局、対⑦杉本昌隆七段(2勝0敗)
第10局、対⑬金井恒太六段(2勝1敗)
さて、昇級予想ですが、昇級者は間違いなく上記の4名から2名が昇級すると思います。
しかし、どなたが昇級するのかは極めて微妙です。
まず近藤誠也五段ですが、残り藤井七段に勝って2勝1敗なら昇級確定です。
また藤井七段に負けて2勝1敗でも、順位が最上位のため、昇級が有力です。
しかし、残り1勝2敗なら、昇級は難しいかもしれません。
次に杉本昌隆七段ですが、残り3連勝なら問題なく昇級確定です。
残り2勝1敗の場合は微妙です。
そして、残り1勝2敗の場合は、昇級は難しくなります。
藤井聡太七段は、4名のなかで順位が最下位であるため、残り3連勝が絶対条件だと思います。
順位上位に近藤五段と杉本七段がいて、1敗はしているものの順位上位の船江六段がいるためです。
残り2勝1敗の場合は、頭ハネで昇級できない可能性があります。
船江恒平六段も、残り3連勝が絶対条件だと思います。
ただ3連勝しても、やはり頭ハネで昇級できない可能性があります。
残り2勝1敗の場合は、昇級は絶望だと思います。
藤井聡太七段の熱狂的なファンの目には、師弟ダブル昇級も現実味を帯びてきたかもしれません。
年が明けての残り3番。皆さん悔いのないよう頑張っていただきたいものです。
降級点、7名は誰か?
現在、2勝以下の成績下位者は以下の10名です。
2勝5敗 ③佐々木勇気七段
2勝5敗 ⑩小林裕士七段
2勝5敗 ⑯佐藤秀司七段
2勝5敗 ※㉞田中寅彦九段
2勝5敗 ※㊲福崎文吾九段
1勝6敗 ㉕門倉啓太五段
1勝6敗 ※㉖泉 正樹八段
1勝6敗 ㉗堀口一史座七段
1勝6敗 ※㉟富岡英作八段
0勝7敗 ㉔日浦市郎八段
※:降級点1(降級点2で降級)
佐々木勇気七段は近い将来のA級八段候補だと思っていますので、今後の奮起を期待しています。
私、棋楽と同年代の先生方が、降級のピンチを迎えているのは寂しい限りです。
残り3局、降級点回避に向けて、是非とも巻き返して欲しいものです。