やはり先手有利か②
プロ棋士平均の先後勝率比
プロ棋士公式戦の結果では、先手の勝率が後手の勝率を僅かに上回り、0.5285 でしたので、先後勝率差・先後勝率比は、以下のとおりとなります。
先後勝率差 = 0.5285 - 0.4715
= 0.0570
先後勝率比 = 0.5285 / 0.4715
= 1.121
トップ棋士の先後勝率比
次に、現在のトップ棋士、名人・A級棋士・タイトル保持者の公式戦記録から、同様に先後勝率差・先後勝率比を算定すると、以下の表のとおりとなります。
<名人・A級棋士公式戦記録>
先手勝率 後手勝率
※渡辺 明 350/143 0.710 309/192 0.617 0.093 1.151
①豊島 将之 260/092 0.739 224/124 0.644 0.095 1.148
②広瀬 章人 213/114 0.651 206/129 0.615 0.036 1.059
③佐藤 康光 585/282 0.675 461/363 0.559 0.116 1.206
④佐藤 天彦 180/083 0.684 185/106 0.636 0.048 1.077
⑤羽生 善治 782/264 0.748 675/347 0.660 0.088 1.132
⑥糸谷 哲郎 200/101 0.664 183/110 0.625 0.039 1.064
⑦三浦 弘行 326/204 0.615 303/252 0.546 0.069 1.127
⑧稲葉 陽 161/081 0.665 150/091 0.622 0.043 1.069
⑨菅井 竜也 178/069 0.721 146/075 0.661 0.060 1.091
⑩斎藤慎太郎 131/051 0.720 104/063 0.623 0.097 1.156
<参考記録:A級以外のタイトル保持者>
永瀬 拓矢 187/062 0.751 171/076 0.692 0.059 1.085
藤井 聡太 084/012 0.875 098/022 0.817 0.058 1.071
注1)データは、「将棋棋士DB」による勝敗と勝率
注2)データは、先後不明局等を除く
注3)データは、2020年07月14日現在
注4)※印は名人、丸中数字はA級順位
藤井聡太は最強の棋士か
以下の表は、先の表を先後勝率比で並べ替え、プロ棋士平均の先後勝率比(1.121)で区分すると、何か最強の棋士たる条件が見えるような気がします。
③佐藤 康光 585/282 0.675 461/363 0.559 0.116 1.206
⑩斎藤慎太郎 131/051 0.720 104/063 0.623 0.097 1.156
※渡辺 明 350/143 0.710 309/192 0.617 0.093 1.151
※豊島 将之 260/092 0.739 224/124 0.644 0.095 1.148
⑤羽生 善治 782/264 0.748 675/347 0.660 0.088 1.132
⑦三浦 弘行 326/204 0.615 303/252 0.546 0.069 1.127
⑨菅井 竜也 178/069 0.721 146/075 0.661 0.060 1.091
※永瀬 拓矢 187/062 0.751 171/076 0.692 0.059 1.085
④佐藤 天彦 180/083 0.684 185/106 0.636 0.048 1.077
※藤井 聡太 084/012 0.875 098/022 0.817 0.058 1.071
⑧稲葉 陽 161/081 0.665 150/091 0.622 0.043 1.069
⑥糸谷 哲郎 200/101 0.664 183/110 0.625 0.039 1.064
②広瀬 章人 213/114 0.651 206/129 0.615 0.036 1.059※名人又はタイトル保持者
即ち、最強の棋士とは、先手番のアドバンテージを活かして高勝率をあげながら、後手番での勝率を極力下げない棋士ではないでしょうか。
棋士は、通常、クラスが上がれば上がるほど、強い棋士と数多く対局することになりますので、勝率も下がってきます。
また、個人差はあるものの、棋士としての峠を超えてまいりますと、やはり年齢を重ねれば重ねるほど、勝率は下がってきます。
そう言った意味で、今月27日に50歳を迎える羽生先生の先手番・後手番の高勝率は、タイトル獲得99期、最強の棋士に相応しい驚異的な数字だと思います。
そして、その羽生先生の驚異的な高勝率をも圧倒的に上回る藤井二冠は、羽生の背中を追う正に史上最強の棋士と言えるのです。